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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

新型リーフついに初公開! 効率&効率の超効率戦略EVで日産を救えるか?

公開日: 更新日:

日産リーフ(価格未定)

「効率、効率、効率重視で効率的に開発していこうよ!」(リーフ担当エンジニア)

 今週、年内発売予定の新型EV、3代目日産リーフの詳細が公開された。何より今の日産の吃緊の課題は負債。5月の決算では6709億円の純損失と人員2万人削減のリバイバル計画を発表し、早急に体質を改善する。

 一方、世界最大の水商売とも言われる自動車ビジネスだけに、実は世界的ヒットを飛ばせば赤字などすぐ解消できる。となると、本当に重要かつ気になるのは近々出るはずの新車=3代目リーフとなるわけだが、既に3月には外観デザインを公表。残る詳細報告が待たれていた。

 というわけで、まず注目はサイズと迫力で、一見確かにワイルドにSUV化。よりデジタル化したVモーショングリルや、LEDを細かく散りばめたフロントマスクや、浮き上がるようなリアのLEDホログラムコンビランプが印象的だ。

 加えて日産独特のオリエンタルデザインも特徴で、ホイールは日本庭園を意識した「水引き」模様だし、2本と3本のラインは「ニッサン(2と3)」を意味しているらしい。

 一方意外なのは扱いやすさで、全長は4480mmから4360mmに12㎝も短くなり、全幅は1810mmと20mm広くなり、全高の1550mmはさほど変わらない。

 細かいところではフロントオーバーハング(主にバンパー長)が200mmほど短くなり、最小回転半径も5.3mと10cmほど短縮され、かたやラゲッジルームはほぼ変わらぬ420ℓレベル。

 昨今、新しくなるたびに拡大する新車達とは裏腹に、SUV化で一見大きく見せつつ、逆に実質コンパクト化し、取り回しを向上させている。

単純なゴージャス化でもロングレンジ化でもない

 意外なのはEVで最も大切な航続距離に関わる搭載電池量で、今までは40kWh&60kWhの2種だったが、52.9kWh&75.1kWhと共に拡大化。同時に航続距離は最大600km超えと伸びている。

 ここに見え隠れするのは単純なゴージャス化でもロングレンジ化でもない。冒頭のエンジニアコメントにあったように、「効率化」である。

 ボディは実質小さくし、取り回しや扱いやすさを改善しつつ、室内の広さは変わらないか、足元は広くし、同時にSUV化で見た目の迫力を増す。

 何よりも航続距離は空力向上を図り、SUVタイプでは極めて高い空気抵抗係数cD値=0.26を記録。小さめボディに従来よりエネルギー密度を17%上げた大容量電池を効率的に搭載し、ラージ系EVに負けない性能を獲得する。

 パワートレインも侮れない。グループ会社のジャトコと開発したモーターとインバーターとギアをセットにしたeアクスルを使い、従来よりスペース効率を高める。モータートルクは従来より大きい。

 そのほかエネルギー効率を見直し、エアコンに従来より高効率なヒートポンプ式を先代に続き採用すると同時に、今まで捨てていたモーターやバッテリー、ナビ関係の発熱も回収。

日産らしくマジメで失敗しないEVという出来映え

 ナビ関係は14インチと12インチの最新ダブルディスプレイだが、ナビリンクバッテリーコントロールを装備し、目的地に応じて夏は冷やしすぎない、冬は暖め過ぎない熱マネージメントを実現。

「ちりも積もれば山となる」ではないが、今まで捨てていた熱や無駄に作って居たエネルギーを細かく回収。より効率&効率重視の考えで無駄なく作り上げているのだ。

 一方、モニターが電動で回ったり、ヤケに大型化していたりするような極端なデジタルエンタメ化や、テスラのような首が痛くなるような加速で勝負はしてこない。

 あくまでも日産らしく、マジメにいまどきのEVを作り上げたという感じ。まさにインパクトではなく効率最重視のEVなのだ。

 そして気になる価格は未発表だが、恐らく中国BYDや韓国ヒョンデほど安くはしてこないだろう。

 というか、そこで勝負しても今のアジア勢に対抗できない。それ以上に、今後弾けるかもしれないEVバブルを考えるとパワーやデジタルインパクト勝負、コスト勝負は得策ではないと考えたのだろう。

 つまりEVの世界普及を見越して大勝利を狙う大バクチなEVというより、日産らしくマジメで失敗しないEVという出来映え。非常にリスクを抑えた巧みな作りなのだ。これもまた一つの、今の日産流なのかもしれない。

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